ヒトの腸の働きを学ぼう

体の仕組み

執筆: 堀田 伸勝(消化器専門医・医学博士)

こんにちは、ジーケアの堀田です。

今日は潰瘍性大腸炎、クローン病に共通して病状を生じる「消化器」といわれるヒトの腸について一緒に学んでいきたいと思います。

(1) 消化器とは?

消化器の臓器というのは胃や大腸などが挙げられますが、これらの臓器は私たちが食べた食物が体の中を通っていく道筋を考えるとイメージがしやすくなると思います。実際には入り口から出口までの順序で、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸となります。

そしてもちろんこの消化器の臓器の最も大切な機能は、食べ物を消化し、吸収することです。また近年はこれらの機能だけでなく、免疫系のとても大切な機能もあることがわかってきました。

(2) それぞれの消化器の臓器の役割

次にそれぞれの消化器の臓器の構造や機能を紹介したいと思います。

出典
https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=1262203&word=%E6%B6%88%E5%8C%96%E5%99%A8%E7%B3%BB%E3%83%BB%E8%AA%AC%E6%98%8E%E5%9B%B3

①食道

約20-20センチメートルの長さで、主な機能は食べ物を胃に送ることです。この食道はクローン病で時に潰瘍などの病変ができることがあります。

②胃

袋状の構造をしており、最も大切な機能の一つは、食物をためて、消化することです。そのため胃の粘膜からは胃酸が分泌され、また胃が縮んだり拡がったりすることで食べ物が胃酸とよく混ざり合い消化が進んでいきます。この胃酸の濃度は、胃の中を頂点に食べ物が通っていく以下の臓器である十二指腸、小腸、大腸にかけて下がっていきます。

ここで一つ豆知識です。炎症性腸疾患の薬の中で、5-ASA製剤と呼ばれる薬にはこの胃酸の濃度の変化を利用して、薬を効率的に大腸に行き渡らせる工夫をしたものがあります。胃もクローン病で特徴的な病変を作ることがあります。

③十二指腸

胃と比べると粘膜が大きく変化を始め、食べ物と接する表面積を増やすための絨毛(じゅうもう)という構造が現れてきます。

この絨毛は髪の毛のブラシの毛のような構造で、腸の中に細く突き出た構造をしています。この構造があることで、食べ物と接触できる面積を多く確保することが可能となっています。

そしてこの絨毛を用いて胃酸の濃度が高い食べ物が十二指腸に入ったことを感知してホルモンを分泌します。この刺激により膵臓(すいぞう)から食べ物を消化するための酵素(こうそ)(消化酵素)が混ざった膵液が活発に分泌(ぶんぴつ)されて出るようになり胃酸の中和が始まります。

また同じように十二指腸からの刺激により胆汁(たんじゅう)の分泌も増えて、食物の中の脂肪を吸収できるようになります。

④小腸

主な機能は糖分や脂肪、ビタミンなど栄養素の吸収です。十二指腸と同様に粘膜に絨毛という構造があることで消化されている食物と接する面積を大きくしているという特徴的な構造をしています。また小腸には免疫(めんえき)と呼ばれる私たちの体を守ってくれている組織が発達しているパイエル板と呼ばれる構造もあります。

小腸はクローン病で最も病状が起きやすい臓器であるため、手術で大部分を切除してしまうといわゆる「短腸症候群(たんちょうしょうこうぐん)」と呼ばれる栄養素が吸収できない状態になります。これは栄養の補給のために日々点滴が必要になってしまう状態で、クローン病において手術を繰り返す患者さんで時に生じてしまう難しい問題です。

⑤大腸

主な機能は水分を吸収すること、多くの腸内細菌を蓄えることです。

大腸で便の水分がしっかりと吸収されることで通常の便は形を保つ、いわゆる「バナナ」のような便になります。しかし潰瘍性大腸炎で大腸に炎症が起きてしまうと水分の吸収ができなくなり水っぽい下痢になってしまいます。

また大腸に多く存在する腸内細菌のうち、私たちの健康維持に必要な「良い」菌がいることがわかってきました。また最近では腸内細菌が肥満や精神状態など全身に影響を及ぼしている可能性も指摘されています。

このように消化器の臓器はそれぞれが大切な役割を果たしていますが、これらの臓器のうち、潰瘍性大腸炎は主に大腸のみに、クローン病は全ての消化器の臓器に潰瘍などの病変を起こしてしまう病気です。その病変の場所によって、例えば潰瘍性大腸炎の下痢のようにそれぞれの病気で特徴的な症状が起きてくるのです。

また最近では「病は気から」ではなく、「病は腸から」とも言われるように、腸内細菌を含めた腸の状態が精神的状態を含めた全身に影響している可能性が指摘されてきています。とても興味深い点ですね。

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堀田 伸勝

医師、医学博士。専門は潰瘍性大腸炎、クローン病など炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、などの消化器内科。日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会内視鏡専門医。2015年より米国ミシガン大学研究員。2018年7月より帰国し、現在都内病院にて診療に従事。

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