不足に注意!IBDとビタミン・ミネラル

IBDと食事

執筆: 宮﨑 拓郎(公衆衛生学修士(栄養科学)、米国管理栄養士)
監修: 杉原 康平(栄養学博士、管理栄養士)、堀田 伸勝(消化器専門医・医学博士)

 

こんにちは、ジーケアの宮﨑です。

今回は、ビタミン、ミネラルとIBDの関係について紹介させていただきます。

IBDとビタミン・ミネラルのポイント

  • IBDでは、ビタミンとミネラルが不足しがち
  • ビタミンとミネラルの不足により、貧血や骨粗鬆症リスクが増加
  • 定期的なモニタリングとサプリメント、食事による補給が大切

 

IBDでは活動期・寛解期ともにビタミンとミネラルが不足することが多いと言われています。実際にIBDでは、どのようなビタミン・ミネラルが不足し、どのように不足を補っていくべきなのでしょうか。今回はこれらの点について詳しく解説していきます。

 

1. ビタミン・ミネラルとは?

微量栄養素であるビタミンやミネラルは、体の機能や調子を整えることや多量栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質)の消化吸収をサポートするなど重要な役割を担っています。

微量栄養素は、体内で必要量を生成することができないため、食事などによる摂取が不可欠となります。

 

主なビタミンとミネラル

ビタミン脂溶性ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK
水溶性ビタミンB群(B1, B2, B6, B12, 葉酸、ナイアシン)、ビタミンCなど
ミネラル(無機質)鉄、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムなど

 

2.  IBDではビタミン・ミネラルが不足しやすい?

IBDの活動期では、十分に食事が摂取できないことや、体内への吸収が炎症によって阻害されることなどにより、ビタミン・ミネラルが不足しやすくなります。

また、それぞれのビタミン・ミネラルが吸収される消化管の部位は異なることがあり、炎症の発生部位や手術部位などにより、不足しやすいビタミン・ミネラルが異なります。

一方、炎症が落ち着いている寛解期であっても、日々の食事の偏りや過度な食事制限などによりビタミン・ミネラルが不足することがあります。

これまでの研究で、微量栄養素が欠乏しているIBD患者さんは、入院期間の長期化や手術からの回復に時間がかかることなどが明らかにされていますので、ビタミン・ミネラルが不足しないよう注意する必要があります。(1)

IBD患者で不足する可能性が高いビタミンとミネラルを下表にまとめました。

 

IBD患者で不足する可能性のある主要ビタミン・ミネラル

名称リスク患者不足による症状主な食物源目標値*補充方法不足率(1)
活動期IBD

ベジタリアン

前更年期

貧血、疲れ、虚弱

脆い爪

赤肉

ホルモン

男性:7.5mg

女性:6.5mg (月経なし)

静脈内注入

経口サプリメント

30-90% IBD
ビタミンD屋外へ出ないカルシウム・骨代謝障害

炎症を促進する可能性あり

魚介類

卵の黄身

きのこ類

男性:5.5μg

女性:5.5μg

経口サプリメント

日光浴

22-70% CD〜45% UC(3)
ビタミンB12ベジタリアン

回腸の炎症・切除

貧血、疲れ、神経系障害動物性食品男性:2.4μg

女性:2.4μg

血管内注入

経口サプリメント

〜22% CD
亜鉛ベジタリアン

慢性下痢

治癒の遅延

味覚嗅覚障害

小児の成長遅延

肉、牡蠣

ナッツ

男性:10mg

女性:8mg

経口サプリメント約15% IBD
葉酸食事制限

スルファサラジン使用

貧血、疲れ緑葉野菜

レバー

男性:240μg

女性:240μg

経口サプリメント〜80% CD
カルシウム乳製品制限骨密度の低下乳製品男性:650mg

女性:650mg

経口サプリメント80-86% IBD(3)
マグネシウム慢性/急性下痢骨代謝障害、筋肉痙攣、疲れ緑葉野菜

大豆製品

男性:370mg

女性:290mg

経口サプリメント

静脈内注入

13-88% IBD(3)

※IBD; 炎症性腸疾患、UC; 潰瘍性大腸炎、CD; クローン病

Table 3. Key micronutrients commonly at risk of deficiency in patients with IBD(2)を一部改変

*30-49歳の食品摂取基準を記載しました。他の年齢の摂取目標については下記リンクからご確認ください。https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf

3.  ビタミン・ミネラルが不足するとどうなるの?

ビタミンやミネラルは体内で必要量を合成することができないため、食事からの摂取が不足すると様々な症状が現れます。

どのビタミン・ミネラルが不足するかによって症状が異なり、見た目では判断しにくいものも多いので注意が必要です。特に貧血と骨粗鬆症は、IBD患者さんで多いと言われていますので注意しましょう。

 

1)貧血

IBD患者では、鉄やビタミンB12の摂取不足に加え、炎症による出血や薬剤による骨髄抑制などにより貧血が起きやすいと言われています。(4)

貧血の症状として、動悸、息切れ、めまい、頭痛、倦怠感などがあり、生活の質にも大きく影響します。貧血を判断する指標として、血中ヘモグロビン濃度(基準値:男性 13.5-17.0 g/dl, 女性 11.5-15.0 g/dl)を調べるのが一般的です。

貧血になると、爪がスプーンのように反り返ったり(スプーンネイル)、氷などの栄養のないものを無性に食べたくなる(異食症)などの症状も出ますので、このような症状がみられる場合は担当の医師に相談しましょう。

貧血には様々な原因がありますので、その原因に合わせて鉄やビタミンB12などの補充が必要となります。(4)

 

2)骨粗鬆症

IBD患者では、乳製品を避けることによりカルシウム不足の人が多いと言われています。(2)また、カルシウムの吸収を促進するビタミンDが不足しているIBD患者さんも多いです。(3)カルシウムやビタミンDは、骨を形成するうえで重要な栄養素で、不足すると骨密度などが低下します。

食事からの栄養素摂取不足に加え、IBDでは炎症やステロイドの使用、運動不足などにより骨密度が低下しやすくなっており、骨粗鬆症リスクが高いことが報告されています。(5)

特に、小児期は骨を形成する重要な時期で、IBDを早期に発症した場合の骨密度低下が懸念されています。実際に10-40%の小児IBD患者において、骨密度の低下が見られるとも報告されています。(6)

骨粗鬆症になると、骨折などのリスクも高まり健康寿命に大きく影響するため注意が必要です。担当の医師と相談して、ビタミンDのモニタリングを行うとともに、リスクの高い患者さんでは骨密度測定などが必要になることがあります。

(4)ビタミン・ミネラルはどうやって補うの?

ビタミンやミネラルの不足は、血中のビタミンやミネラルの濃度を定期的に測定することにより判断する事ができます。お腹の調子は良くても、倦怠感やめまいがある場合は、担当医と相談して血液検査をしてもらうのがいいと思います。

IBDでは、不足したビタミン・ミネラルは、静脈内注入や経口サプリメントが使われることが一般的です。その後症状の回復とともに食事を改善して不足しがちなビタミン・ミネラルの摂取を徐々に増やしていきましょう。

 

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参考文献

(1)  Weisshof R, Chermesh I. Micronutrient deficiencies in inflammatory bowel disease.Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 18(6):576-581, 2015. 

(2)  Halmos EP, Gibson PR. Dietary management of IBD—insights and advice.Nat Rev Gastroenterol Hepatol.12(3):133-146, 2015. 

(3)  Hwang C, Ross V, Mahadevan U. Micronutrient deficiencies in inflammatory bowel disease: From A to zinc.Inflamm Bowel Dis. 18(10):1961-1981, 2012.

(4)  Kaitha S, Bashir M, Ali T. Iron deficiency anemia in inflammatory bowel disease.World J Gastrointest Pathophysiol. 6(3):62, 2015. 

(5)  Ali, T., Lam, D., Bronze, M. S. & Humphrey, M. B. Osteoporosis in inflammatory bowel disease.Am J Med 122, 599–604, 2009.

(6)  Kim S, Koh H. Nutritional aspect of pediatric inflammatory bowel disease: its clinical importance. Korean J Pediatr. 58(10):363, 2015. 

宮﨑 拓郎

米国管理栄養士(RDN)、公衆衛生学修士 (MPH)、中小企業診断士。帝人ファーマ(株)で約10年間新薬のアライアンス・事業開発等を経験後、退職し渡米。2018年ミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。卒業後約8ヶ月間、大学病院等での管理栄養士インターンを経て米国管理栄養士資格取得。在学中から約2年に渡り同大学消化器内科臨床試験コーディネーターとして消化器疾患の臨床試験(低ファドマップ食など)にも従事。

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