やっぱり大切、IBD(炎症性腸疾患)と食物繊維

IBDと食事

執筆: 宮﨑 拓郎(公衆衛生学修士(栄養科学)、米国管理栄養士)
監修: 杉原 康平(栄養学博士、管理栄養士)、堀田 伸勝(消化器専門医・医学博士)

 

こんにちは、ジーケアの宮﨑です。

今回は、IBD(炎症性腸疾患:潰瘍性大腸炎、クローン病)と食物繊維について説明させていただきます。

食物繊維とは?

食物繊維とは、人の消化酵素によって消化することができない難消化性成分の総称です。(1)現在は5大栄養素に次ぐ“第6の栄養素”として、その健康促進効果が期待されている栄養素になります。

食物繊維は、野菜・果物以外にも海藻や穀類などに多く含まれており、その定義の広さから様々な種類が存在します。ダイエット飲料などに用いられている難消化性デキストリンも食物繊維の一種になります。

食物繊維は様々な種類がありますが、主に水溶性食物繊維と不水溶性食物繊維に分けられます。それぞれの特徴、消化器症状への効果、多く含まれる食物を以下の表にまとめました。

 

水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の特徴

水溶性食物繊維不水溶性食物繊維
特徴水に溶けてジェルのようになる水に溶けない
成分名ペクチン、イヌリン、グルコマンナンなどセルロース、リグニンなど
消化器症状への効果下痢:過度の水分を吸い便を形成

便秘:水分を吸い便を柔らかくすることで排便を促進

便秘:便を形作るとともに大腸に残る便を掃きだす
多く含まれる食物(2)<穀類>1.5g以上/可食部100gあたり

ライ麦、オートミール、ライ麦パン、

<野菜>0.7g以上/可食部100gあたり

切り干し大根、ごぼう、かぼちゃ、にんじん、モロヘイヤ、ほうれん草

<果物>0.5g以上/可食部100gあたり

アボガド、みかん、マンゴー、キウイ、西洋なし

<きのこ>0.7g以上/可食部100gあたり

なめこ、本しめじ

<まめ類>1.0g以上/可食部100gあたり

あずき(ゆで)きなこ、挽きわり納豆

<穀類>1.5g以上/可食部100gあたり

ライ麦粉、オートミール、コーンフレーク、ライ麦パン、フランスパン、玄米、全粒パスタ等全粒製品*

<野菜>1.0g以上/可食部100gあたり

だいこん(葉)、切り干し大根、れんこん、ごぼう、かぼちゃ、にんじん、えだまめ、モロヘイヤ、青ピーマン、キャベツ、セロリー、ほうれんそう、グリーンピース、パセリ

<果物>0.5g以上/可食部100gあたり

アボガド、バナナ、りんご、なし、いちご、みかん、マンゴー、キウイ、西洋なし

<きのこ>2.0g以上/可食部100gあたり

しいたけ、なめこ、本しめじ

<まめ類>1.0g以上/可食部100gあたり

いんげん豆(ゆで)、ささげ(ゆで)、あずき(ゆで)、えんどう(ゆで)、きなこ、挽きわり納豆

 

食物繊維はなぜ必要なの?

日本人の食事摂取基準では、男性:20g/日以上、女性:18g/日以上の食物繊維の摂取が目標値とされています。なぜ食物繊維が我々の身体にとって必要なのか、その理由を簡単にご説明します。

最近では難消化性デキストリン入りの飲料などが増えてきており、食後の血糖値の上昇を抑制する効果があることはCMや雑誌などで見たことがある人も多いのではないでしょうか。

食物繊維には上記の表にあるように、下痢や便秘などの消化器症状に効果がありますが、腸管の炎症を制御するうえで重要な栄養素であることが明らかにされています。

食物繊維は人の消化酵素では分解できないため、消化管内に存在する微生物(腸内細菌)によって分解・代謝されます。この腸内細菌によって産生される最終産物の“短鎖脂肪酸”が腸の炎症を制御するのに重要なものになります。

この短鎖脂肪酸は、腸管の細胞のエネルギー源として利用されますが、それ以外にもGタンパク質共役受容体という受容体を介して、腸管のバリア機能や免疫機能を調整することが明らかにされています(下図参照)。(3)

IBDと食物繊維について

食物繊維は健康を保つために重要な栄養素ですが、IBDでは病状によって食物繊維の摂取量に注意が必要です。では、具体的にどのような点に注意すべきかご説明します。

2015年に公表されたIBDと食物繊維の関係をまとめた総説(4)では、様々な臨床ガイドライン(5)を基に以下のようにまとめています。

 

IBDの状況・状態別の食物繊維に対するガイドラインの推奨

IBDの状況・状態ガイドラインでの推奨
活動期、瘻孔、狭窄、大腸摘出などの手術後低食物繊維食を実施、特に高食物繊維が含まれる以下の食物の摂取を控える

  • 全粒成彬、玄米等
  • コーン、ポップコーン
  • ナッツ、種類
  • 消化の悪い果物、種のある果物(ただし、皮をむいたりんご、熟れたバナナ、メロンを除く)
  • 豆類
  • 消化の悪い野菜、皮付きのじゃがいも
  • プルーンジュース
寛解期、症状が落ち着いている状況食物繊維が多く含まれる食物を徐々に食生活に取り入れ、食事摂取基準の目標値を目指す(男性:20g/日以上、女性:18g/日以上 **)
潰瘍性大腸炎便秘の際は、高食物繊維食を検討する

**日本の18-69歳の食物繊維の食事摂取基準(2015年版)(6)

腸管で消化されない食物繊維は、大腸・肛門まで運び出すために、消化管の活動が活発になります。そのため、IBD活動期で消化管を安静に保つ場合に、低食物繊維食が推奨されています。また、狭窄を合併している場合や手術後などにも低食物繊維が推奨されています。特に、上記の表にあるような食物繊維の多い食品の摂取は控えましょう。

野菜や果物は、食物繊維以外にも、抗炎症作用のあるポリフェノールなどの様々な生理活性物質(フィトケミカル)を含んでいるため、身体の健康のためには必要不可欠です。IBD活動期では野菜などを制限するのではなく、なるべく食物繊維が少ないものを選択するようにしましょう。

以前はIBD寛解期でも低食物繊維食が推奨される時期がありました。しかし、現在は狭窄がある場合を除いて、寛解期では食物繊維の摂取が推奨されています。(7)実際、動物実験では、高食物繊維食が腸管の炎症を抑制することが報告されています。(8),(9)

しかし、興味深いことに、食物繊維のサプリメントを用いた臨床研究では、IBDに対して明確な臨床効果は得られていません。(10)また、明確な効果が得られていないため、欧州のガイドラインなどでは、食物繊維のサプリメントはIBDに推奨されておりません。(11)

なぜIBD患者さんでは効果が見られないのか、その詳細な理由はわかりませんが、食物繊維は食事から摂取することが重要なのかもしれません。

IBDと食物繊維、腸内細菌に関する研究は現在も盛んに行われているので、引き続き情報をアップデートしていきたいと思います。

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参考文献

(1) ACC Dietary Fiber Definition Committee. Definition of dietary fiber: Report of the dietary fiber definition committee to the board of Directors of the American Association of Cereal Chemists. Cereal Food World. 46:112–26, 2001.

(2) 食品データベース(https://fooddb.mext.go.jp/)より食物繊維量を取得

(3) Sugihara K, Morhardt TL, Kamada N. The Role of Dietary Nutrients in Inflammatory Bowel Disease.Front Immunol. 15;9:3183, 2019 

(4) Pituch-Zdanowska A, Banaszkiewicz A, Albrecht P. The role of dietary fibre in inflammatory bowel disease.Prz Gastroenterol. 3:135-141, 2015. 

(5) Brown AC, Rampertab SD, Mullin GE. Existing dietary guidelines for Crohn’s disease and ulcerative colitis.Expert Rev Gastroenterol Hepatol. 5:411-25, 2011.

(6) 佐々木 敏, 菱田 明. 日本人の食事摂取基準(2015 年版). 第一出版. 2014年

(7) Yao CK, Staudacher HM. The low-fibre diet: contender in IBD, or has it had its time?Lancet Gastroenterol Hepatol. 4(5):339. 2019.

(8) Hartog A, Belle FN, Bastiaans J, De Graaff P, Garssen J, Harthoorn LF, et al. . A potential role for regulatory T-cells in the amelioration of DSS induced colitis by dietary non-digestible polysaccharides.J Nutr Biochem. 26:227-33, 2015. 

(9) Silveira ALM, Ferreira AVM, de Oliveira MC, Rachid MA, da Cunha Sousa LF, dos Santos Martins F, et al. Preventive rather than therapeutic treatment with high fiber diet attenuates clinical and inflammatory markers of acute and chronic DSS-induced colitis in mice.Eur J Nutr. 56:179-91, 2017.

(10) Wedlake L, Slack N, Andreyev HJN, Whelan K. Fiber in the treatment and maintenance of inflammatory bowel disease: a systematic review of randomized controlled trials.Inflamm Bowel Dis. 20:576-86, 2014. 

(11) Forbes A, Escher J, Hébuterne X, et al. ESPEN guideline: Clinical nutrition in inflammatory bowel disease.Clin Nutr. 36(2):321-347, 2017. 

宮﨑 拓郎

米国管理栄養士(RDN)、公衆衛生学修士 (MPH)、中小企業診断士。帝人ファーマ(株)で約10年間新薬のアライアンス・事業開発等を経験後、退職し渡米。2018年ミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。卒業後約8ヶ月間、大学病院等での管理栄養士インターンを経て米国管理栄養士資格取得。在学中から約2年に渡り同大学消化器内科臨床試験コーディネーターとして消化器疾患の臨床試験(低ファドマップ食など)にも従事。

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