潰瘍性大腸炎/クローン病(IBD)患者体験談: 32歳の会長が想う患者会の魅力とは

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今回はみえIBD会長のしんちゃんにインタビューさせて頂きました。

しんちゃんはクローン病を高校時代に発症するも、アパレルに勤務する傍ら、様々なIBD関連メディアで情報発信を積極的に行いながら、32歳にして三重県のIBD患者会「みえIBD」の会長を務めています。そんなしんちゃんに患者会との出会いや患者会を通して得たこと、感じた事、今後の展望などを伺いました。

患者会に入会したきっかけを教えてください。

17歳の頃、四日市羽津医療センターでクローン病の確定診断を受け、そこで管理栄養士として働いていたGコミュニティでもおなじみの中東先生に声をかけられたことがきっかけです。当時、四日市羽津医療センターはIBDセンターを作りIBD治療に力を入れていました。時を同じくして中東先生も病院をベースとした患者会を設立したいという構想を抱いており四日市羽津医療センターに動きかけた結果、みえIBDが誕生したと聞いています。僕が病院に通い始めたちょうど1年前の出来事だそうです。当時は四日市羽津医療センターに併設された施設を借りて患者会が開催されていました。なので、中東先生に誘われるまま遊びに行く感覚で入会しましたね。

みえIBDにはどのような方が集まられていたのですか?

四日市羽津医療センターの患者さんに加え、僕と同じように中東先生に会いに参加される患者さんも多くいらっしゃいました。年代としては一番若い方で40代だったので、私だけが極端に若かったです。当時はまだ生物学的製剤がようやく日本に入ってきたという段階で、様々な病院をたらい回しになった方、ステロイド依存になった方、腸をかなり短く切っていた方など、様々な方が患者会に集まっていました。

当時の患者会ではどのようなイベントを行っていましたか?

医療講演会がメインでした。当時はまだインターネットで信頼性の高い情報を得ることは難しかったので、医療講演会が大変貴重な役割を果たしていました。J-pouchの作り方など専門的な話から、当時まだ開発段階だったステラーラの話など様々なテーマで医療講演会が開かれていました。

当時は今よりもさらに専門医が少なく、2時間待って診察は5分という状況でしたので、患者会で得られる情報は貴重な”セカンドオピニオン”となっていました。

 特に印象に残っている出来事は何ですか?

みえIBDに一度熊本IBDの中山会長がご講演に来られたのですが、その時「僕は家族を養うために小腸を切りながら働いていた。体を切り売りしながら働いてきた。」という話を聞いたことは衝撃でした。当時は、生物学的製剤が十分に発達していなかったこともあり、再燃をして入院した時に最短で社会復帰する方法は炎症部位を切除する手術でした。クローン病を抱えながらもたくましく働いているその姿大きな刺激を受けました。

副会長、会長にはどういった経緯で就任されたのですか?

2015年にストレスと過労で腸管出血による入院を経験しました。その際に今後のキャリアについてどうするかを深く考えるようになり、退院後は起業家の勉強会などにも参加したりしながら、自分の可能性を広げるために様々な取り組みにチャレンジしていました。そのような中、2017年に中東先生からお声がけいただき副会長に就任しました。

当時の会長さんのことをよく知っていたので特に不安はなかったです。その後、2019年に会長に就任しました。

患者会の活動を通してどのようなことを学ばれましたか?

副会長に就任した当初は正直、患者会の全体像が見えていなかったと思います。当初は「患者会はなんて古臭い体質なんなんだ?」と思ったものの、一人では患者会を変えられないし、若手が集まっている名古屋IBD様などが羨ましく思えたこともありました。何か新しいことができないかなと模索していた時期もあります。

しかし、定期的にイベントに参加するようになって、この患者会は「今いる50代-60代の患者さんたちのための患者会なのだ」と気付きました。自分の感覚では古臭いと思っても、今患者会に参加して下さっているメンバーにはこの形がベストということが多々あるのです。

例えば、経費の中で発送費が占める割合は非常に高いので、オンラインで送付すれば良いのでは?と思ったこともありますが、結局書面で欲しい人が多いから書面になっているんだなという事を患者さん達とお話しをする中で気付くようになりました。患者会は現在参加してくれている人たちのためのものだと僕は考え方が変わりました。なので、「その人たちに不便を感じてもらってまで、新しい仕組みや新しい患者を入れる必要はないかな」と思うようになりました。

患者会は存続することに意味があると思います。みえIBDは、中東先生が作ってきたとてもユニークで他の患者会にはない“らしさ”があります。僕の会長としての役割は、中東先生が作ってきたみえIBDの良さや価値をより多くの人に知ってもらうことだと思っています。

有難いことに、今では多くのメディアにみえIBDの活動を掲載して頂けるようになり大変嬉しく思っております。また、年に一度行っている「IBDお食事会」が現在みえIBDでは目玉のイベントとなっております。長野県にある松本大学から管理栄養士を志す学生さんが遥々みえIBDの患者さんのために「IBDでも美味しく安全に食べられる食事」を提供してくれる大好評企画です。

コロナ渦の昨今では開催が難しいと思いますが、状況が落ち着いたら必ずまた開催したいと思っております。その際はみえIBDにどうぞ遊びに来てくださいね!

今後の展望は?

みえIBDの活動とともに、患者会に入っていないIBD患者さんと繋がれる場所を作っていければと考えています。オンライン形式かもしれないし、患者会のような地域に根差したものかもしれない。どんな形がいいのかを思案しているところです。現在では生物学的製剤の発達で、IBD患者さんの多くが仕事と病気を両立できる時代になりました。

今後は「IBDを抱えながらもどのように働いていくのか?」という悩みに寄り添える場がより重要になると考えています。病気と両立しながら働く人たちが繋がり、悩みを共有し、アドバイスをし、励まし合える。みんなが病気とうまく付き合いながら活躍できるようにサポートしていける場所を作って行きたいですね。そして、IBD患者さんだけがつながるのではなく、IBDという病気をより多くの方に知ってもらえるような活動も行なっていきたいと思います。

最後に、経験はお金出しても買えません。病気の経験をプラスに変えて、みんなが寛解を維持しながら活躍できるような社会を作っていければと思います。辛い経験を辛いままで終わらせるのではなく、病気の経験があったから今の自分があるんだと言える人生が僕は理想だと思っています。僕もまだまだ理想には程遠いですが、これからも病気だからと諦めるのではなく、沢山のことに挑戦していきます。

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鈴木紀之

経営学修士 (MBA)。製薬会社にて、マーケティング戦略、プロダクトマネージャー、営業等を担当した後、休職し渡米。2018年ミシガン大学経営学修士修了。在学中は、新規メディカルデバイス開発プロジェクトや診断薬・医療機器販売会社へのコンサルタント業務に従事。2018年8月より製薬会社にて事業開発を担当。

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